4月30日のご退位を前に天皇、皇后両陛下の即位30年と、ご成婚60年を祝う音楽会が、皇居東御苑の桃華音楽堂で開かれました。桃華音楽堂は一般にあまり知られていませんね。桃華音楽堂は、昭和41年に、音楽好きの香淳(こうじゅん)皇后=昭和天皇の皇后、の還暦記念として建てられました。
音楽会が開かれた桃華音楽堂とは
200名収容の音楽ホールです。テッセンという花の花弁8枚を形どった屋根と八面体の建物のフォルムが独特で、初めて見るとなかなか印象的です。
音楽会は、両陛下のほか皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻らが出席しました。司会は宇崎竜童、阿木耀子さん夫婦です。
色々な歌が披露された中で、特に天皇陛下が喜ばれたのは、両陛下と30年来の交流があるという由紀さおりさんが歌った「夜明けのスキャット」でした。
音楽に合わせて歩行訓練も
2012年に、陛下は冠動脈バイパス手術を受けました。手術後のリハビリ中に美智子皇后が流されたのが「夜明けのスキャット」だったということです。陛下はこの曲に合わせて歩行訓練されたとも伝えられています。
「夜明けのスキャット」(1969年3月)は、由紀さおりさんの事実上のデビュー曲にして、109万枚も売れる大ヒットをした代表曲です。特に1番が「ルー、ルールルル」と歌詞なしのスキャットで歌われ、由紀さんの美しい声が多くのファンを魅了しました。カラオケでも、「ルー、ルールルル」と、のど自慢の女性たちの声が響きました。
決して忘れ得ぬ思い出になる
リハビリ中に流された由紀さんの「夜明けのスキャット」が陛下の心を慰め、そのことが美智子皇后への思慕と相まって心深く刻まれたに違いありません。私も5年前、冠動脈バイパス手術を受けた経験があります。手術後のリハビリ中に耳目にしたことは、今でもありありと思い浮かべることができます。
天皇陛下は生前退位されます。急逝された昭和天皇のあとを継ぎ、象徴天皇という難しい地位にあって、いかにして国民に寄り添うか、心砕かれてきた30年でした。
天野外科医が感動した「公平の原則」
陛下の手術を担当した心臓血管外科医・天野淳さんは、病院スタッフに平等に挨拶される陛下の姿に感動しました。それは、陛下が、公務の優先順位 を「公平の原則」に照らして行動されるからだと知り、人生観が変わったと語っています。
国民誰もが陛下を尊敬するのは、陛下が「公平の原則」を守り続けてきたからこそ、と思いました。自分も、名声へのこだわりを捨て、どんな患者にも自己のベストを尽くすことを続けようと決意したそうです。
「夜明けのスキャット」のエピソードも、庶民派天皇ならではですね。陛下は、歴代天皇の中で最も国民に愛された天皇として歴史に残ることでしょう。