有名なバラ窓は残ったようですが・・
パリの世界遺産の一角、ノートルダム大聖堂が火災にあい、フランス国民はもとより世界中に衝撃を与えました。特徴的だった96メートルの尖塔と、上から見ると十字架型に配置された屋根を焼失しました。壁などは石造りでしたが、屋根の部分は「森」と称されるほど大量の木材が使われていたようです。寺院は10年かけて行われる修復工事が始まったばかりでした。出火の原因は調査中ですが失火のようです。
ナポレオンの戴冠式にも使われた
12世紀に着工し、14世紀にほぼ完成した大聖堂は、2度の大戦の惨禍を逃れ、いまや毎年1200万人が観光に訪れるほど人気があります。魂のより所としていたパリ市民のみならず、文字通り世界の宝というべきものでした。ナポレオンの戴冠式にも使われ、文豪ユゴーは小説「ノートル=ダム・ド・パリ」を書きました。
同寺院には聖遺物と言われる宗教上の宝物や絵画などがありました。バラ窓と呼ばれた美しいステンドグラスが有名で、焼失が心配されましたが、消防士が燃え落ちる前に避難させたと伝えられています。
再建費用と時間は天文学的数字か
早くも再建に協力したいとの声が、日本も含めて、世界各国から上がっています。再建の費用は天文学的数字になると予想されます。完全に再建されるまで、何十年かかるか見当もつかないとの専門家の声が出ています。
カトリックでは司教座がある教会が大聖堂
ところで、そもそも大聖堂とは何でしょう。一般にキリスト教に縁が薄い私たちは、単に「大きい聖堂」と理解していると思います。間違いとは言えませんが、宗教的には意味があります。とくに西方・カトリック教会、聖公会(英国国教会)では、司教(主教=教区の最高教導権者)の椅子(座=カテドラ)が置かれている聖堂を、建物の大小に関わらず大聖堂(カテドラル)と呼んでいます。
一方、東方・正教会では、司教座にあるなしに関わらず、規模によって大聖堂と呼ぶことがあるようです。同様にプロテスタントでは、司教が存在しませんので、大型の聖堂を大聖堂と呼ぶことが多いようです。
日本ではニコライ堂や浦上天主堂など
大聖堂は世界中にあります。カンタベリー大聖堂、ウェストミンスター寺院(英国)。サン・ピエトロ大聖堂(イタリア)。聖ソフィア大聖堂(ウクライナ)。グラーツ大聖堂(オーストリア)。ローザンヌ大聖堂(スイス)。シャルトル大聖堂(フランス)。ケルン大聖堂(ドイツ)・・・。日本では、東京復活大聖堂(ニコライ堂)、浦上天主堂などが有名ですね、
ケン・フォレットの「大聖堂」がお勧めです
大聖堂と、それを取り巻くヨーロッパの精神を理解するために、ぜひご紹介したい小説があります。世界的ベストセラーになった、ケン・フォレットの「大聖堂」と、「大聖堂ー果てしなき世界」です。ケン・フォレットは、映画化もされたスパイ小説「針の目」で登場し、数々のスパイ・冒険小説のベストセラーを出しました。どれも大変面白いのですが、ご紹介した「大聖堂」二つの物語と、20世紀を舞台にした物語「巨人たちの落日」は、しっかりした歴史観に支えられた超一級の面白さです、。
小説「大聖堂」は、大聖堂の修復に人生をかける職人とその息子の物語です。物語があまりに面白く、読み終えるのが惜しかったのを覚えています。結局3回読み返しました。
「大聖堂ー果てしなき世界」 は、「大聖堂」刊行から18年後にケン・フォレットが発表して、世界中の「大聖堂」ファンを驚かせ、熱狂させました。「大聖堂」をしのぐ超一級の大ロマンです。枯れることがないケン・フォレットの才能のすごさに、あきれるばかりです。本当に、素晴らしく面白いんです。日本ではソフトバンク(SB)文庫で出ています。ノートルダム寺院のことを理解するためにも、ぜひお読みください。