昭和最大の未解決事件の全貌
グリコ・森永事件(警察庁広域指定114号事件)は、昭和最大の未解決事件と呼ばれています。平成が終わり令和が始まるこのとき、この大事件の真相を追った小説「罪の声」が映画化されることが発表されました。小栗旬、星野源が物語の重要な役を担うことが決まっています。
事件は、1984年、銃を手にした3人組の男たちに江崎グリコ社長が自宅から誘拐され、身代金(現金10億円と近海100㎏)を要求されたことから始まります。3日後に社長は自力脱出しましたが、その真相はいまだ伏せられたままだと言われます。この誘拐事件を皮切りに、 グループは「かい人21面相」と名乗り、阪神の食品会社をターゲットにして企業脅迫事件を繰り返しました。狙われた企業は、江崎グリコのほか丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二家、駿河屋でした。
脅迫電話に子供の声が使われた謎
犯人グループは、金を支払わなければ食品に毒を入れると脅迫したのです。実際に、小売店に青酸入り菓子が置かれる事件が発生して世間を震撼(しんかん)させました。また、脅迫電話に女性の声のほか、子供の声が使用されて人々を驚かせました。この間、犯人グループは報道機関に挑戦状を送り付けるなど派手な行動をして、世間や企業に揺さぶりをかけています。ある評論家は、事件を「劇場型犯罪」と定義しました。
捜査対象は12万5千人にのぼった
1984年と1985年に「かい人21面相」が起こしたのは、2件の殺人未遂事件と、28件もの脅迫事件でした。警察に挑戦状、報道機関と企業に脅迫文・挑戦状を計144通出しています。捜査の対象は12万5千人に上り、捜査に当たった警察官は130万1千人でした。
犯人像については、元グリコ関係者、株価操作をねらった人物、北朝鮮工作員、元暴力団組長グループなど取り沙汰されました。捜査員が目撃したという「キツネ目の男」の似顔絵が出されたこともあります。結局、犯人グループは1985年8月12日、自ら終息宣言を出して事件は終わりました。もちろん犯人を追及する捜査は続けられましたが、2000年2月18日、公訴時効を迎えて、未解決のまま捜査も終了しました。
父親の遺品のテープに幼い自分の声が・・・
映画の原作「罪の声」(塩田武士)は、2016年の習慣文春のミステリーベスト10に選ばれ、18万部を売り上げるベストセラーになりました。映画の中で、小栗旬は10年前の未解決事件を追う新聞記者の役を演じます。星野源は父親のテーラーを受け継いで働く市民ですが、ある日、父親の遺品のカセットテープを見つけます。そこに入っていたのは幼い自分の声でした・・・。
グリコ・森永事件にヒントを得て、高村薫はベストセラー「レディー・ジョーカー」を書いています。