来年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」のキャストが発表されました。
門脇麦、岡村隆史、石川さゆり、西村まさ彦、高橋克典、沢尻エリカ、木本雅弘、堺正章、尾美としのり、伊藤英明、が出演します。
光秀謀反の動機をどう描く
主人公明智光秀役は長谷川博己です。光秀から討たれる織田信長は染谷翔太です。ところで、光秀は、なぜ主君・信長を「敵は本能寺にあり」と襲い、殺したのでしょうか。
ドラマのオリジナル脚本は「太平記」の池端俊作です。諸説ある光秀謀反の動機が、ドラマでいかに描かれるか興味深いところです。
「学校では教えてくれない戦国史の授業」
ここではドラマ鑑賞の興趣を盛り上げるために、いくつかある謀反の謎解き説で、私が最も真実に近いかも、と最近感心した井沢元彦「学校では教えてくれない戦国史の授業」からをご紹介します。
「信長の光秀いじめ」が動機?
光秀の反逆の動機として昔から言われていたのが「信長の光秀いじめ」です。
いじめの話はいくつもあるのですが、徳川家康の光秀の接待がまずいと、信長が光秀をきつく叱ったという話が有名ですね。
しかし、こうしたいじめの話は、そうとでも解釈しなければ反逆の理由が見つからないからです。
根拠に乏しい「黒幕」説
反逆をそそのかした「黒幕」がいたという説もあります。「黒幕」候補は、ときの天皇、ときの将軍足利義昭、豊臣秀吉です。
しかし、いずれも有力な根拠に乏しく推察の域を出ません。詳しくは、前記の井沢本を読んでください。
反逆の日「異国征伐」の大軍団も出航予定だった
井沢氏は、光秀単独犯行説を取ります。「黒幕」の消去法でその結論に至ったのではありません。
光秀が信長を討った天正十年六月二日未明、という日付に注目しました。実は、この六月二日は、信長の三男・信孝を総大将とする「四国征伐」のための大軍団が大阪を船出する日だったのです。
四国を治めていたのは長宗我部元親。もともと信長と元親の仲は悪くなかったのに、実力を付けた信長が、天下統一の妨げになると、元親の領土を要求したのが争いの発端です。
光秀の筆頭家老も深く関わる
光秀は、長宗我部との友好関係を築くために信長に命ぜられて努力していました。それを、「もういい、縁を切れ」と主君に振り回されるのは辛かったことでしょう。
ここに、もう一人登場人物がいます。光秀の筆頭家老・斎藤俊三(としみつ)です。信長が長宗我部元親(もとちか)と仲がよかったころ、信長の家臣でした。
信長の命で、妹を元親に嫁がせています。そして、信長が大きくなり過ぎた長宗我部を討つ指示を出したときは、光秀の筆頭家老になっていました。
信長の方針転換は、自分の家老の妹が元親に嫁に行った光秀にとっては、妹を嫁がせた俊三にとっても、非常に辛いものだったに違いない、というのが井沢氏の見立てです。
当時の資料「言継卿記」(ときつぐきょうき)には「日向守(ひゅうがのかみ、光秀)の家臣である斎藤内蔵助(くらのすけ、利三)こそ、この度の謀反(本能寺の変)の主犯である」と書いてあるそうです。
また、斎藤俊三の処刑を見た公家の一人は、日記に「謀反随一、斎藤俊三処刑さる」と書いているそうです。謀反随一は、一番悪いやつ、という意味です。
井沢氏は、決断を下したのは光秀、主犯は光秀。「光秀をその決断に追い込んだのは、この四国長宗我部問題であり、家老の斎藤俊三が深く関わっていたというのが真実に最も近いのではないか」と思う、と結論付けています。
皆さんはどう考えられますか。ともあれ、「麒麟がくる」で、この問題がどう解釈されるのか放送が待たれるところです。