香港のデモが止まりません。9日に「逃亡犯条例」改正案に反対する民衆100万人が街頭に出て抗議活動をしました。
この人数は、香港市民700万人の、7人に一人です。これに対して香港特別行政府長官が不手際を詫び、改正案の年内凍結を発表しました。
しかし市民たちは、これに納得せず、あくまで改正案の撤廃を求めて、16日には200万人が抗議デモに参加したのです。
香港市民の4人に1人が参加したことになります。その後も、抗議活動は終息の気配を見せていません。
改正「逃亡犯条例」が市民の言論の自由を奪う
「逃亡犯条例」とは何でしょうか。海外で犯罪を犯して香港に逃げてきた逃亡犯を、要請があればその国に引き渡すというものです。
そのためには引き渡し条約を結ぶ必要があります。香港は、すでに30カ国と条約を結んでいます。改正案は、条約の相手国を増やそうというものです。
その相手国の中に中国も入る、ということで市民が強く反発したのです。
共産党独裁の中国では、言論や思想の自由な表明に対して厳しく取り締まっています。
そのために拘禁や拷問など人権を踏みにじる事例が頻発して諸外国が非難しています。
改正案が通れば、政治批判をしただけで「国家転覆罪」に問われるかも知れないという恐怖が、市民をデモに駆り立ているのです。
この条例は香港住む外国人にも適用されます。
「1国2制度」の骨抜きを画策する中国
市民のこうした動きの背景には、香港を中国に返還した1997年以来の歴史があります。
中国は共産党が支配する社会主義国家ですが、香港はそれまで英国の施政下にあったとはいえ、自由と民衆主義の資本主義体制でした。
香港返還に当たって中国政府は、「1国二制度」を認め、50年間は香港の自治を保障したのです。しかしこの約束は破られました。
民主主義の根本である選挙制度に干渉して、中国寄りの議員や行政府の長しか選ばれない仕組みに改変してしまったのです。
これに反対するデモも2014年に起きましたが当局の弾圧に屈しました。「雨傘運動」と呼ばれた抗議デモです。
名前の由来は、警察の催涙弾から身を守るためにデモ参加者が雨傘を開いて持ち歩いたことから、と言われています。
中国に強い不信感と恐怖心
「逃亡犯条例」改正に反対して200万人もの市民がデモに参加した背景には、民衆主義を奪われたうえに、言論の自由も奪われるという、市民の強い危機意識があります。
共産中国に対する不信感と恐怖心があります。そうなれば香港は香港でなくなる、というの市民たちに共通した思いです。
私の意見は、香港の騒動を対岸の火事と傍観するだけではだめだと思います。
中国のことは中国に決めさせるしかないと思いますが、香港に関しては、長い歴史を背負っている香港市民の意思を尊重すべきでしょう。
日本は自由と民主主義の国です。その意味では、香港は共産中国からの自由主義体制侵略を防ぐ「思想の防波堤」ともいうべき存在です。
日本と香港は深い経済的つながりもあります。日本は、国際的公約である「1国2制度」を侵す中国に抗議するとともに、香港市民との連帯を表明すべきではないかと考えます。