「妻のトリセツ」(黒川伊保子編著・講談社+α新書)が話題になっています。編著者は人工知能研究者です。私は妻の強い勧めで読んでみました。妻は、私が読むと心当たりがいっぱい出てくるはずだ、というのです。
妻の言動が理解できた
一読してみると、なるほど、心当たることが確かにあります。日頃、なんでそうなるの?と思っている妻の言動が理解できました。
統計によると、夫から申し立てた離婚の動機で「精神的虐待」が2000年度の6位から、2017年は2位に急上昇しているそうです。「妻が怖い」という夫が増えているわけですね。
私は妻から「精神的虐待」を受けたことはないし、怖いと思うこともありません。しかしときどき、ふとしたことで怒りを爆発させる妻の言動が理解できずに辟易(へきえき)することはあります。本書によると、私だけでなく、ほとんどの夫にはその“怒り”の原因はわからないとのこと。たとえ理由を聞きだすことに成功して解決策を提案しても、妻の機嫌がよくなることはないそうです。あな、恐ろし。理由は、「妻の望む夫の対応と夫が提案する解決策が根本からずれているから」
女性脳にある「感情の色合い」
なぜそうなるのか。本書では、夫が(妻も)抱えるジレンマを、脳科学の成果を駆使して解説しています。女性の脳は、感情に伴う記憶を長期にわたって保存し、何かことあれば、その感情と連鎖する体験の記憶を夫にぶつけてくる。だから夫は困惑するのですね。その体験記憶を数珠つなぎで引き出すきっかけになる「感情の色合い」を、編著者はトリガー(引き金)と呼んでいます。
トリガーには、ネガティブトリガー(怖い、辛い、ひどいなどの嫌な思い)と、ポジティブトリガー(嬉しい、美味しい、かわいいなどのいい思い)があります。本書は、辛い記憶 ネガティブトリガー を作らない(妻に嫌な思いをさせる発言と行動を知る)ことと、ポジティブトリガー(笑顔の妻が戻ってくる、意外に簡単な方法)を教えてくれます。
夫の悪気ない言葉に妻はなぜ傷つくのか
一つだけご紹介すると、夫は無自覚に妻を傷つけることがあります。夫の悪気のない言葉に妻はなぜ深く傷ついてしまうのか。それは、女性脳は「心の通信線」と「事実の通信線」の2本を使って会話するからです。例えば友達の「事実」を否定しなければならないとき、女性はまず「心」を肯定し「あなたの気持ち、よくわかる。私だって、きっと、同じ立場なら、同じことをしたと思う。でも、それは間違ってるよ」
男性は基本的に「事実の通信線」のみで、「それ、違ってる」といきなり結論を出す。悪気はなくても、女性は「心の通信線」をわざと断たれたと感じ、存在そのものを否定された気分になる。夫が「心の通信線」に気づきさえすれば、深刻な男女のミゾは埋められる・・・
妻にとっても大変役に立つ
前述たように、私には思い当たることが多く大変参考になりました。そして、この本を読んで役に立つのは、夫ばかりでなく、実は妻にとっても夫を理解するのに大いに役に立つはずだと思いました。私の妻が熱心に勧めてくれた理由です。皆様にもお薦めします。